人間関係の悩みのヒント
武術の稽古では、基本的に人間関係の訓練をしています。
自分が!ではなくて、自分と相手が!への視点のシフトです。
実際の人間関係修復はどちらかが諦めたり、無関心になっていたりすると、解決は難しくなります。
しかし、双方に解決の意思があれば、時間はかかっても必ず解決が出来ます。
もちろんそこには問題の1つである、コミュニケーションのあり方が大きく関わってきます。
コミュニケーションとは、相互の関係があって初めて生まれるものです。
と、なるならば、自分がどうしたい!自分はこうしたい!などの一方通行のあり方では、自分よりも力のある方には全く通用しません。
その為の基礎が、武術稽古にはあります。
昨日やった稽古は、聴き方、伝え方、反応を見るです。
相手の話を聴くというのは意外に当たり前のようで決して簡単ではありません。
頭ではわかっていても、身体が、「自分のことを理解して欲しい」「相手を説得したい」という状態になり、
相手のことを全くみれなくなり、その意思は相手の耳に入らなくなります。
そんな状態である自分のことはもちろん、相手のことや周囲のことも全く分からない状態になりますので、結果、
適切な行動を取れなくなってしまうのです。
これを武術の技の稽古で何度も思い知ります。
「相手を投げたい」「自分の思い通りに動かしたい」という状態では
相手のことを全くみておらず、結果相手を導き投げることは出来ない。
たとえ、相手の意見を否定し、却下しないといけない場合でも、そこでは
ひとたび相手の「思い」を受け入れることが重要なのです。また、どこで受け入れるのか?なども大事になってきます。
相手に「伝える」ことも、「聴く」と同様に簡単ではありません。
何かを伝えるとき、例えばイライラして心の状態が乱れていると、
そのイライラが先に相手に伝わってしまって、相手には耳を閉ざされてしまいますし、
伝える側の心がネガティブな状態や気持ち悪い状態でも、同じことが起きます。
知識や情報を伝えるだけならばどのような状態でも出来ますが、、。
「思い」のように形のないものを行動として伝えることは難しいものです。
そもそも伝えるには、相手と「信頼関係」も大事になります。
その信頼関係を築く順番も先ずは聴くからです。
「聴く」→「伝える」で、逆は上手く行きません。
したがって、武術では「伝える」訓練より「聴く」訓練が優先されます。
「反応する」は、大抵は無意識のうちにしていることでしょう。
相手が過激な言葉を使うと、その刺激に無意識に反応してしまって、
さらに過激な言葉で応酬することになります。
武術でも受け側になると、自分の反応しているのがよくわかります。
或いは、その反応を無理に抑えようとすると大きなストレスになり、
心に過度な負担をかけることになります。
相手からの刺激そのものを止めることは出来ないので、刺激が生じた後に、自分がどのように対処するかが重要です。
このとき、最も良い方法の一つが「ひと呼吸おく」です。
相手が過激な言葉を使ったとしても、ひと呼吸おき、間とゆとりをつくる。
ゆとりが相手を氣づかう力になります。
これは本当に大きいことです。
「聴く」「伝える」「反応する」それぞれを訓練しておくことで、
大抵の相手や周囲とコミュニケーションを取れるようになって来ます。
人間は一人一人異なる考えや意見を持っています。
だからこそ、出会い、触れ合い、話し合うことで良いものが生まれます。
「聴く」「伝える」「反応する」という基本が出来てさえいれば、
変な表現ですが、安心してぶつかり合うことも可能になってきます。
そこから素晴らしいものが生まれます。
もしもこの基本が出来ていないと、
相手や周囲から拒絶されるのを恐れて、
お互いが傷つかない適当な距離を取るようになります。
その結果、何も生まれなくなります。
「聴く」「伝える」「反応する」は心を静めることで磨かれます。
武術の稽古を通じて一緒に磨いて参りましょう。